クニマスは 西湖で生命 ながらえて
くにますは さいこでいのち ながらえて
秋田県の田沢湖のみに生息していたクニマスは1940年代には絶滅しましたが、平成22年(2010年)に遠く離れた山梨県の西湖で発見されました。クニマスは一生を湖で過ごす魚で、昔は祝い事や病気見舞いの贈答品になるほど特別な魚でした。しかし1930年代に凶作が続くと農業用水の確保が優先され、酸性の川の水をいったん田沢湖に送り希釈して使用したため酸性の水では生息できないクニマスは絶滅したのでした。
それでも田沢湖の人々は500万円もの懸賞金をかけてクニマスを探しました。戦前に西湖と本栖湖にクニマスの発眼卵を送った記録があったので、これを頼りに田沢湖の漁師が本栖湖で漁を行いますが捕獲には至りませんでした。
しかし・・・
一連の経緯を秋田県水産振興センターの職員が本にして、クニマスの標本を保管していた京都大学に献本しました。この本を通じてクニマスの生態に興味を持った京大の中坊教授はCGで泳ぐ姿を復元しようと参考のために西湖から取り寄せたヒメマスの中に混ざっていた黒いマスを調査したところクニマスであることが判明したのです。
クニマスが西湖で生き続けることが出来たのは湖底に湧水源があり泥が堆積しない砂礫が産卵場所になることや、水温が適していたこと、また釣りの対象のヒメマスの生活圏より深いところを回遊しているので棲み分けができていたことなどが影響したようです。