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読み札解説「う」

うるわしき 西沢渓谷 水さやか
うるわしき にしざわけいこく みずさやか

日本の滝100選 七ッ釜五段の滝

日本三大急流の富士川を河口から遡ると甲府盆地南端で釜無川と笛吹川に分かれ、その笛吹川の上流にあるのが西沢渓谷です。秩父多摩甲斐国立公園の国師ヶ岳南面の森から滴る流れを集め、七ッ釜五段の滝をはじめとする様々な渓谷美を刻んでいます。

遊歩道は整備されているとはいえアップダウンもあり一周5時間くらいはかかるので、歩くときはそれなりの準備は必要です。
国道140号線の西沢大橋からしばらく林道を歩き、東沢との合流点にある吊橋を渡って西沢渓谷に向かい右岸に沿って歩くと恋糸の滝、貞泉の滝といった個性的な滝や紺碧の水を湛えた淵が次々に現れてきます。そして七ッ釜五段の滝を堪能しながら橋を渡り森林鉄道の廃軌道を戻ってきます。
また西沢渓谷は景色の移ろいだけでなく、四季折々うつりゆく姿もまた良きものです。紅葉の頃はもちろんですが・・・

季節によっては満開のシャクナゲが迎えてくれることもあります。

写真提供 山梨市観光協会(上2枚)


圧巻は日本の滝100選にも選ばれた七ッ釜五段の滝です。森林の間を縫う流れが五段の滝となり、連続して穿たれた滝壺がまるでお釜のように見えます。

七ッ釜五段の滝(部分)

遊歩道はここで終点となり、帰路は右岸の森林鉄道の廃軌道を戻ります。西沢渓谷は渓流の美しさだけでなく、森林の織りなす色彩の鮮やかさも美しく、「森林浴の森100選」にも選出されています。

日本の森・滝・渚100選

西沢渓谷へのアプローチ

森林鉄道の廃軌道の紅葉

ところで、西沢渓谷の隣には東沢渓谷があるのですが、ここは秩父の山々の近代登山の先駆けといえる田部重治が『笛吹川を遡る』という紀行文でその渓谷美を紹介しています。これは山岳紀行文の古典的名作といえるもので昭和22年に発行された新制高等学校の『高等国語』の教科書に収録され全国の高校生に読まれていました。

『仰ぎ見る限り、圧するばかりの重なり合う両岸の青葉の間を、盛んな音を立てて幾多の渓流が笛吹川に流れ込み白う閃く厚朴(ほお)花は、水の音に絶えず戦慄(おのの)いている。・・・・・・見よ笛吹川の渓谷は、狭まり合って上流の方へ見上げるかぎりの峭壁をなし、其の間に湛える流れの紺藍の色は汲めども盡きぬ深い色をもって上へ上へと続いて居る。流れはいつまで斯くの如き峭壁にさしはさまれているのだろうか。』(『山と渓谷 田部重治選集』 近藤信行編 ヤマケイ文庫より)