をりをりに 楽しむ出湯 数多あり
をりをりに たのしむいでゆ あまたあり
写真提供 ほったらかし温泉(山梨市)
このかるたで温泉については増富温泉のみをその効能と泉質から固有の札で取り上げていますが、山梨県にはその他にも素晴らしい温泉が沢山あります。
確かに伊香保や草津、また別府といった他県の有名どころと比べると知名度こそ劣りますが、その数や泉質の豊富さと宿や施設がバラエティーに富んでいること、また比較的アプローチが良いこともありその時々の目的に合わせて楽しむことができます。
なぜ山梨に温泉が多いかというと・・・
温泉博士として有名な大月短大名誉教授の田中収先生によれば、日本列島はユーラシアプレート、北アメリカプレート、太平洋プレート、及びフィリピン海プレートの4つのプレートがせめぎ合う世界的にもユニークな場所にあるうえ、更に山梨県は糸魚川と静岡県を結ぶフォッサマグナ(大地溝帯)の真上にあるため火山ができやすく、その副産物として様々な温泉が湧出しているとのことです。
昔からの温泉としては太宰治も滞在して執筆活動に勤しんだ甲府の湯村温泉、スキーで骨折した石原裕次郎が湯治で滞在した下部温泉が有名です。
他には西暦705年から営業している世界最古の旅館としてギネス認定された西山温泉、武田信玄が湯屋の造営を認め、現在も武田家の侍大将の中でも筆頭格といえる山県三郎右兵衛尉昌景の子孫が旅館を経営している川浦温泉、地味ですが飾り気のない素朴さが残る塩山温泉などが挙げられます。
昭和36年にブドウ畑の中から噴出した石和温泉なども首都圏からのアプローチの良さで温泉地として一躍有名になりました。
こうした湯治場や温泉地とは趣を異にした一軒宿としては、甲州市の旧大和村の嵯峨塩鉱泉や富士吉田市の明見地区にある不動湯などがあります。このふたつは甲州に多い「ぬるめ」のお湯が特徴で、夏場など長時間でも気持ちよく入っていることができます。
更にはここ20~30年ほどの間に官民問わずに掘削した新しい温泉にも素晴らしいものがあります。特に甲府盆地の夜景と八ヶ岳が一望できる市川三郷町の「みたまの湯」や、登る朝日を拝みながら入浴できる山梨市の「ほったらかし温泉」などは多くの人を惹きつけています。